フォークリフト使用中の現場で働く中間管理職必見!KYTとは
フォークリフトによる労働災害は年間約2,000件ほど発生しています。フォークリフトによる事故を未然に防ぐためにはKYT(危険予知訓練)が有効です。今回の記事ではKYTの意味や実践する意義、フォークリフト事故防止のための方法を紹介します。
フォークリフトの安全研修にお悩みの方
2.事故防止や危険予知に活かせるKYTとは?
3.【簡単】危険予知トレーニング(KYT)4ステップ
4.【状況別】事例から学ぶフォークリフト事故とKYTの実施
5.まとめ: KYTで作業員の危険に対する意識付けが重要
フォークリフト操作の基本と事故防止の注意点として、次の6つが挙げられます。
- ヘルメットの着用
- 乗降・発進
- 加減速
- 旋回
- 一時停止
- 駐車
いずれも、フォークリフトを安全に運転するために知っておくべき操作や重要なポイントばかりです。ここでは、項目ごとの詳しい内容について説明します。
1. ヘルメットの着用
最近の労働災害は全体として減少傾向にあります。しかし、フォークリフトによる事故は依然として減少には至っておらず、いつどこでフォークリフト事故が起こるのかは分からないのが実情です。
フォークリフトは荷物の積み下ろしをする危険な作業もあるため、ヘルメットの着用は欠かせません。万が一事故が発生したとしても、ヘルメットを着用することで事故時の重症化を防げます。
2. 乗降・発進
フォークリフトに乗降する際は左側から乗り込み、左手はアシストグリップ、右手は背当を持ち、乗車ステップに左足をかけたらタイミングを合わせて乗車します。その際、レバーやハンドルを持ったり、飛び乗りをしたりすることは大変危険です。
発進前はシートやハンドル、ミラーの位置を調整して自分に合った状態にしましょう。そして、運転席に正しく乗ったことを確認した上で「走行コントロールレバーが中立位置にあること」や「ブレーキがかかっていること」などを確認してください。なお、ハンドル操作は左手で行うのが原則です。
3. 加減速
走行時は、フォークを地上から5~10cm上げ、マストを6度以上後傾させて走行します。
加速はクラッチペダルを一杯に踏み込んだ後、前後進レバーを前速に入れ、指差呼称で周囲の安全確認をしましょう。速度を上げる際は、駐車ブレーキを緩め、アクセルペダルを踏み込んでいきます。
一方、減速の場合はブレーキ操作以外にも、進行方向と反対のレバーを利用することも可能です。
また、急発進や急旋回、急ブレーキをしてしまうと荷物を放り出してしまうだけでなく、転倒の危険もあります。そのため、ブレーキは徐々にかけるようにしましょう。
4. 旋回
フォークリフトは、前輪駆動かつ後輪がかじ取りの役割があり、普通の自動車よりも小回りが効くという特性があります。また、ステアリングにはパワーステアリング装備が標準となっているため、ハンドル操作が簡単です。
そのため、自動車と同じように旋回しようとハンドルを切ってしまうと、後輪が外側へ回ってしまい、巻き込み事故や衝突事故などにつながる可能性もあります。
旋回の際はあらかじめ速度を落として旋回方向に車両を寄せ、ステアリングハンドルを早めに切ることで、後部の振れを抑えられます。
5. 一時停止
フォークリフトを一時停止させるには、まず走行コントロールレバーを戻し、その後ブレーキペダルを徐々に離します。ただし、フォークリフトの急停止は荷崩れを起こす原因にもなるため、一時停止の際にも徐々に停止するように意識しなければなりません。さらに、停止と発進のいずれも、安全を確認した上で行うことが重要です。
6. 駐車
フォークリフトを駐車させ、運転者が車両を離れる場合は次の流れに沿う必要があります。
- 駐車レバーを入れる
- 駐車ブレーキをかける
- マストを繰り込む
- フォークを前傾させ、床面まで降ろす
- キースイッチを抜く
- 必要であれば歯止め処理を行う
また、できるだけ坂道には駐車しないようにしましょう。やむを得ない場合は、必ず歯止めをセットしてください。
事故防止や危険予知に活かせるKYTについて、以下の2つをご紹介します。
- KYTの定義
- KYTを実践する意義
危険予知訓練はフォークリフトの危険予知だけでなく、職場の作業状況の中にひそむ危険への対応にもつながります。KYTの定義について今一度理解し、社員の安全のためにも自社で取り入れていきましょう。
KYTの定義
KYTとは「危険(Kiken)」「予知(Yochi)」「トレーニング(Training)」の頭文字をとった危険予知訓練を意味します。具体的な研修内容について、作業の中にひそむ危険要因と、それが引き起こす現象を発見して解決する能力を高めます。
例えば、イラストシートを使ったり、作業をしたりしながら話し合い、知恵を出し合うことで危険なポイントを行動する前に確認することができます。
KYTを実践する意義
事故は「不安全状態」「不安全行動」の2つの要因が重なることで発生します。中でも、人に起因する不安全行動の減少がKYTの目指すところです。
KYTは危険に対する感性を鋭くしたり、集中力を高めたりと、うっかりや不注意を防ぐ効果があります。また、KYTは話し合いにより訓練できるため、気軽かつ負担も少なく導入できます。
人に起因する不安全行動の減少を目指す危険予知トレーニング(KYT)は、次の4ステップによって実施します。
- 現状把握
- 原因分析
- 対策立案
- 目標設定
具体的なKYTの内容を理解するためにも、ここではステップごとの詳しい内容をみていきましょう。
ステップ1. 第1R(現状把握)
まずは現状においてどのような危険が潜んでいるのかを把握する必要があります。イラストシートや写真を使い、その状況にどのような危険が潜んでいるのかを考え、チーム全員で意見を出し合います
具体的には、例に出した状況での「危険要因」と引き起こされる「事故の型」を探します。「誰が(何が)~になることにより、どのような事故が起こるのか」といった点について参加者全員で話し合います。
ステップ2. 第2R(原因分析)
ステップ1での話し合いによって出た案の中で、重要と思われる項目に「〇」をつけます。そして、その中からさらに絞り込み、最も重要な危険ポイントには「◎」と「アンダーライン」を引きましょう。
危険ポイントを全員で指差し呼称とチェックをします。具体的には、リーダーが危険ポイントを「危険ポイント~なので、~して~になる、ヨシ!」といったように発言し、それをチーム全員で繰り返し唱和する流れです。
ステップ3. 第3R(対策立案)
ステップ2で出た危険ポイントに対して「事故を避けるためにはどうしたらいいのか」といった対策を全員で話し合います。
事故を起こさないためにできることを全員で考え、危険ポイントに対する具体的で実行可能な対策を挙げましょう。また、できるだけ多くの案を出してもらうことも大切です。
ステップ4. 第4R(目標設定)
ステップ3で出た対策案の中から、重点実施項目として「チーム行動目標」を決めます。重要事項に「アンダーライン」や「※」を付け、全体の行動目標として具体化しましょう。
この時、実際の作業時には新たな設備を用意することや作業方法を変えることが難しい場合もありますので、まずは、与えられている条件の中で実施可能なものを取り入れるようにしてみてください。
フォークリフトによる主な事故事例として次の3つが挙げられます。
- フォークリフトと作業員が衝突しそうになった
- フォークリフトと壁に挟まれそうになった
- 荷物棚から転落しそうになった
いずれも、フォークリフトを取り扱う企業でいつでも起こりうる事例です。それぞれの内容から自社の対策へとつなげましょう。
フォークリフトと作業員が衝突しそうになった事例
製品の空箱を入荷場から外に運搬するためシャッター下を通過した際、シャッター前を横切ろうとした作業者と衝突しそうになったという事例があります。
このような場合では、フォークリフトの運転者は曲がり角の前での一時停止し、さらに指差呼称による安全確認を行うことで対策できます。また、作業者が通る通路をフォークリフトが横断しないように区別するのも有効です。
フォークリフトとかべに挟まれそうになった事例
フォークリフトが右旋回で発進したため、作業員が壁との間に挟まれそうになったという事例もあります。この場合、フォークリフトの運転手が作業員の位置を確認しないまま発進させたことが事故の主な原因です。
対策としては、フォークリフトの操作や発進の際に指差呼称を行うことが挙げられます。また、フォークリフトの近くにいる作業員は運転手から見える位置で作業することも重要です。
荷物棚から転落しそうになった事例
引用:ヒヤリ・ハット事例
倉庫の中2階にフォークリフトで荷上げした際、荷を受け取るためフォークパレットに足を入れ、荷物を抱えたときにふらつき落ちそうになるといった事例もありました。これは「パレット上に足を入れたこと」や「フォークを中2階に差し込まなかったこと」が主な原因です。
積み込みや積み下ろしの際はフォークを作業床に差し込む必要があります。また、落下の危険性がある場所での作業は「安全帯を使用する」や「作業場所に手すりを取り付ける」などの対策も有効です。
KYTを自社に取り入れることで、作業員の危険に対する意識付けができます。その結果として「不安全状態」と「不安全行動」を抑制でき、結果的に事故の撲滅を目指せるでしょう。
ヒューマンエラーは、人間ならば誰でも起こす可能性のある「不注意」「見間違い」「聞き間違い」などの結果です。KYTを取り入れることで、フォークリフト作業時に考えられる事故はもちろん、その他の場所や機械使用時の事故の防止にもつながります。
そこで、重要なのが安全教育に関する重要性の啓蒙です。安全確保業務を統括する立場にある安全管理責任者を中心に、 KYTなどを通じて安全の確保に努める必要があります。
なお、VRコンテンツを活用した学習サービス「まなVRクラウド」を利用すれば、気軽に安全に関する研修を実施できます。VRによるリアルな感覚での研修は、社員の安全に関する意識の向上が期待できます。
リモートでの集合研修・教育・講習などに関心のある安全管理のご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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